白い空間『 』

白い空間『門番』

目が覚めた。 何もない白い空間を突き進んでいると、突然、一つの扉が現れた。 毎夜、この不思議な世界に連れていかれる度に思うことがある。 扉の先には、現実世界にとてもよく似ている部屋もあれば、全くこれまでの価値観が通用しない部屋など様々な世界が広がっている。 でも、その扉をくぐって...

妄想話

人工衛星「よゐ子しゃん」

駅前で信号待ちをしていたら、警察官4人に連れられてパトカーに乗り込む人の影が見えた。 「もう!なんも見えねぇ!」 影は男の声で高笑いしながら、はっきりした声でそう叫んだ。 言葉は続いていたが、閉められたドアによって塞がれた。 犯罪を抑止、監視する目的でこの国の管轄する人工衛星『よ...

妄想話

肩身の狭くなった人類のいきかた

世の中は、自分の代わりにAIロボットに働いてもらって生活収入を得る人間と、自ら働く人間とにわかれている。 前者は富裕層であり、後者は私のような貧困層でその差は激しく大きいが、上流階級への憧れなんぞはとうの昔に捨てている。 早くも労働の場にロボットがはびこるようになって20年ほど経...

妄想話

『FUKUMIMI』

ずっと愛用してきた「歩調器」が壊れたみたい。 いつものように目覚めて直ぐ、耳元にセットして起動してみたのだけれど反応がない。 とりあえず制服に着替えてみるものの、怖くて自分の部屋から出られない。焦る。 歩調器はなかなか高額なものだというのに、国内では着用率が90%を超えているそう...

妄想話

ゆびわのいえ

 「ゆびわ」をなくしていることに気付いたのは、タワー型登録借地を昇った後だった。 がらんとした平地を前に、左薬指を見つめて呆然としていた。 「ゆびわ」が手元にないということは、身に着けているもの以外のすべてを失ったということになる。 電話も財布も、わたしの身分を証明するものも何も...

妄想話

宇宙飛行士のうた

ー ○○さん、宇宙飛行士として、  宇宙から地球を眺めた今、思うことはありますか? - 「…あのですね…たぶん、それなりに言葉を用意してきたはずなのですが、それが今の心境に合わないからでしょうか…。 ごめんなさい。やっぱり、それらしい言葉が出てきません。 …あぁ、でも本当にね。 ...

妄想話

遺思~妻とまだ見ぬ我が子へ~

二人で、静かに食事をしていた。 少し離れたところで、テレビが音を立てている。 ニュース番組は「少子高齢化問題を抱える政府の試み」と題して、ある一組の老夫婦を取り上げていた。 その夫婦は、子どもを育てるだけの経済的余裕がないままに結婚し、30年が経過している。年齢的に考えるとすでに...

妄想話

雨上がりのあしあと

 ー わたしが   いじめに遭う 理由にたどりつくまでに   死ぬことにした ー    ・ ・ ・ ・   突然。 体に衝撃を受けて、倒れ込んだ。 誰もいないと思っていた廊下の影から、スカートを揺らしながら足早に三人の影が去っていった。 世の中では、いじめに遭う人は周り...

妄想話

深海図書館

  歪(ひずみ)というものがある。 どのような世界にも、ありとあらゆる、なにごとにおいてもだ。 この海底はきっと、そういった場所の一つなのだろう。 ゆっくりと、まるで花びらが海中を舞うかのように。 光を揺らしながら、一冊の本が降りてきた。 ようやく、安息の地に巡り合えたのだ。 ど...

妄想話

とびだしくん

  子どもの手をとり、行き交う車と距離を取る。 横断歩道の前で、信号が切り替わるのを待つ。 「…おとうちゃん」 私の娘は最近になって車を怖がるようになってきた。 不安そうな顔で見上げてくるので、つないでいる手を大きく上下に揺らしてみると少し表情が和らいだ。 目の前を忙しく横切る視...