世の大いなる転じ目に至るとき、人はおののき、旧き世にとどまらむとす。
その胸には、生業を失ふ憂ひあり、秘めし事の露はるる怖れあり。
世の営みの乱れゆくを案ずる心あり。
人の糧を奪ひ、秘事を洩らし、ひとたび過ちあらば、世を支ふる大いなる仕組みをも損なふことあらむ。
禍を生む知あらば、禍を鎮むる知もまた生まれむ。
身の守りを各々の手にのみ委ぬるは足らず。
人とを結ぶ道、世の営みを支ふる大いなる仕組みにも、備へを怠るべからず。
新しき知を畏れて退くも危うし。
これを信じて身を委ぬるもまた危うし。
知を御するは人の心なり。
知に御せらるることなかれ。
目先の利を追へば、禍の兆しを見失はむ。
世の移ろひを見定め、栄枯盛衰の理をわきまへ、遠き末を思ひて備ふべし。
今はなお、行く末定かならぬ世なり。
衰へしものの内に、後の世を照らす灯りの萌しを見ることもあらむ。
安しとて手を伸ばせば、思はぬ禍に遭ふこともあらむ。
畏れのみにて退かず、望みのみにて進まず。
人の知と相交へ、いかなる世を築くか。
その行く末を定むるは、なお人の心にぞありける。
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