妄想話

」産声「

気が付くと、灰色の地表の上にたたずんでいた。 後方からの風が背を撫で、前へ向き直す。 振り返ってみると、足元の先、灰色の上に白いラインが引かれている。 そのラインは左右に伸びていた。 この薄暗い世界を一周しているかのように延々と伸びていた。 先ほどからやってくるこの微かな風は、...

妄想話

「World Unite Games Olympia」

「World Unite Games Olympia」宣言 「私たちは、世界中の人々がつながり合い、個人の運動参加の自由を尊重することを誓います。誰もが自らの選択で競技に参加できるこの祭典を通じて、全ての人々に平等な機会を提供し、スポーツを通じた国際的な友...

妄想話

信用通貨「オラクル・ベリー」

かつて、世界は大きな変革を迎えた。人々の生きざまがスコアとして数値化され、そのスコアが信用通貨「ベリー」として社会を動かす時代が到来した。 この信用通貨は、元はベーシックインカムの一環として導入されたものであった。 しかし、その対象者である、監視生活を送ることを余儀なくされる者た...

妄想話

もぐらたたき

幼い頃の私は誰にも心を開かず、言葉を発しなかった。両親は私の将来を心配し、あらゆる病院を訪ね歩いたが、どこへ行っても私に変化の兆しは見られなかった。周りの子が学校に通い始めても私の心は閉ざされたままだったが、その頃には自らの意思で外界と接点を持つことを望んでいなかった。 困り果て...

妄想話

無職の証明

ある日、タナカは市役所からの通知に従い、指示された市役所の離れに向かって歩いていた。無職であることを証明するためにだ。しかし、担当の職員は「書類で無職を証明しないでください」と言い張る。タナカは困り果てたが、どうにかして無職であることを伝えようと決心した。 タナカは大きくあくびを...

妄想話

ブレインエクスチェンジャー

酒類も禁止薬物扱いになった昨今、相変わらず精神疾患が現代病としてはびこっている。 脳波をコントロールして鬱や不眠症状を改善する医療アプリとして認められているものがあったが、巷ではそれを改造した「ブレインエクスチェンジャー」なるアプリの使用が事実上黙認されている。 瞬時に眠りに入る...

妄想話

「あの、閻魔さま、」

痛いのは嫌だ。誰かを悲しませたり、困らせたりするのはごめんだ。 そして、誰かを喜ばせるのも…。 でも、なんとなく今、生きているのがつらくて嫌で。 こんなことは考えなければいいのに。何かの拍子で他に意識が行っても、またこの考えの続きに戻ってきてしまう。 そういえば、昔のことを振り返...

妄想話

隠しもの

…どういうことでしょうか、娘がクリーニングに出したのだと。 この数日間、ずっと、そう思っていたのでした。 ぼんくらな私。 こんな語り口調では、何に臨んでも誠意が感じられない、覇気など皆無、アナタは誰かを一瞬たりとも愛したことがないのでしょう、冷たく冷めた人間と同じ漢字を二回繰り返...

妄想話

優しい世界への岐路

人体の秘密、不思議が昨今、急速に解明されつつある。 特にこれまで大まかにしか分類できなかった体調不良、不具合に医学的な病名が付き、病気として社会に認知される流れが強く起きている。 これは診断技術の革新。医療AIがあげた功績だと断言できる。 AIによる身体の探索は詰まるところ、我々...

かくれんぼ

読書で夜更かしなんて私には似合わない

横田創『埋葬』 三十歳前後と見られる若い女と生後一年ほどの幼児の遺体が発見された。犯人の少年に死刑判決が下されるが、まもなく夫が手記を発表する。<妻はわたしを誘ってくれた。一緒に死のうとわたしを誘ってくれた。なのにわたしは妻と一緒に死ぬことができなかった。妻と娘を埋める前に夜が明...