人体の秘密、不思議が昨今、急速に解明されつつある。
特にこれまで大まかにしか分類できなかった体調不良、不具合に医学的な病名が付き、病気として社会に認知される流れが強く起きている。
これは診断技術の革新。医療AIがあげた功績だと断言できる。
AIによる身体の探索は詰まるところ、我々の多くがインストールしている健康アプリが大いに役立っている。
国民がこのアプリで各々の健康データを随時提供する見返りとして医療費が割り引かれ、日々の運動データによってポイントが貯まり、商品が届くというおまけ付き。
老若男女問わず登録しており、普段使い、日常生活におけるガイドとしての機能も信憑性も得ている。
通知設定をONにしていれば個人の持病を対面している相手や周囲に知らせることも可能だ。たとえば身体の不自由な者の接近。突発的な体調不良者、怪我人の発生などなど、突然具合が悪くなっても周囲の手助けや理解が得られる。
最近ではHSP、多汗症、赤面症、吃音症、腋臭症を通知設定ONしている者も存在している。
スプレーを挨拶がてらに「これ、新作ですよ!」なんて吹きかけ合い、談笑する日常風景も以前の社会では見られない光景であった。
誰しもがどこかに体のウイークポイントを抱えている、それを認め合う社会の形成がここに整いつつあるのだ。
ー ー ー ー
「あれ?新人君、急に屈んでどうした?」
『すみません、なんだか体調が…あれ?熱も出てきたような…』
《ピピッ...!!》
お互いに装着したメガネ型端末にアプリからの通知が表示される。
「おいおい、なんだよ。仮病かよ。おどかすなよ」
『はい、午後からの営業先が苦手でそのこと考えていたら、ついつい…』
「…そうなのか?…で?」
『はい!とりあえず現状では定時くらいまで治りそうにないとの即時診断結果が出てます。ですので、これにて失礼します。おつかれさまでした~』
「おぉ。そかー。おー。じゃぁ、また、明日な~」
人気の投稿
-
明け方、スマートフォンの画面が断続的に白く光っていた。見れば通知が百件を超えている。 グループチャットで、また誰かが変な動画でも送ったのかもしれない。そう思いながら画面を開くと、見たことのない通知が一番上に表示されていた。 『あなたに関連する可能性のある画像が公開されています』 ...
-
ずっと愛用してきた「歩調器」が壊れたみたい。 いつものように目覚めて直ぐ、耳元にセットして起動してみたのだけれど反応がない。 とりあえず制服に着替えてみるものの、怖くて自分の部屋から出られない。焦る。 歩調器はなかなか高額なものだというのに、国内では着用率が90%を超えているそう...
-
世の乱れ、人の心も荒れまさり、 頼むべき人を頼みがたく、 すがるべき手をも取り得ぬ世なり。 道行く人の哀れを誘ひ、 帰郷の路銀を乞ふ者あり。 その言葉を信じ、銭を恵みしに、 恩を仇にて返されぬ。 情けの心は欺きの糧となり、 残るは悔いと、人を疑ふ心のみ。 独り闇路をさまよひて、 ...
-
風呂場で湯に浸かっていた。 体が温まってきたところで、少し体を起こしてマッサージをする。 再び深く沈み込む。 水面に向かって泡が「ぷくぷく」とのぼっていくのが見えた。 わたしの体にまとわりついていた泡のカプセルが立ち上っていく。 水の中から抜け出した泡は小さく「ぷちぷち...
-
面影を追い、変わらぬものを慕いて、世の移ろいを眺むる日々なり。されど、目に映るものは数多あれど、心に残るものはわずかなり。 人に語らんとすれば言の葉乱れ落ち、伝えたきことも見失い、ついには胸の内さえ定かならず。されば人と語るを避けれども、心通わす言の葉への憧れは、なお消えず。 己...
0 件のコメント:
コメントを投稿