妄想話

深夜の密会「tell me...」

「あ、夫が来ます」  「ではまた、商品についてご不明な点がございましたら24時間、いつでも…」 夫が寝室に向かってくる気配を感じたので、担当の相手が最後まで話す前に通話をきる。 疚しい気持ちなどない、といえば噓になる。 名残惜しい。 もっと会話をしていたかった。 夫はどたどたと廊...

妄想話

月曜日の俺が殺しに来た、

私なりの幸せを追い求めていたはずだった。 大きな夢や明るい希望はなくとも、この身の丈に合った生活を迎え入れる事こそが最良で、帰宅後の僅かな時間と休日でその余韻を余すことなく嚙みしめる。 こんな調子で人生を終えるのも良しと言い切れる、質素で無欲な自分がきっと好きだった。 しかし、そ...

白い空間『 』

白い空間『道標』

目を閉じると直ぐに白い空間が広がった。 私には睡眠中、強制的に別の世界で目を醒まし、そこで時を過ごさなければならないという不思議な習性がある。 その現象が起きるのは幼少の頃からで、眠りに入れば必ずやってくる。 白い世界をしばらく歩けば、周囲に白いドアが浮かび上がってくる。 そのド...

無国籍活動集団「alias」 妄想話

「アリアの肉」

宗教観も文化もまったく異なった、大陸の奥地に居た少数民族の習わしが形を変え密かに広まってしまうのは多様化、という言葉だけで済まされるはずがない。 その少数民族は、亡くなった人の遺体を食すという慣習をもっていた。 そんな習わしが公けになったきっかけは一人の冒険家の配信映像だった。 ...

妄想話

よるのほし

  寝付けない、ながい夜。 カーテンを開いたまま、硝子窓の外を。 霞んだ雲に潜っては顔を出す、少し欠けた月を。 ベッドに横になったまま、長い時間、目で追っていた。 月明かりの下で洗濯物がやわらかに風に揺られている。 洗濯物を夜に干すのは、きっと、亡き母を傍に感じられるからだ。 母...

妄想話

傍らの理解者

細やかな雨粒がガラス窓を叩いているのがわかる。 一か月前に交通事故にあって、私の身体はバラバラに壊れた。 事故にあったことで記憶の方も定かではない。 後に聞いた話だと、私は急に路上に躍り出て立ち止まったそうだ。 これまでずっと人との接触は最小限に抑え、会社でも私生活でも当たり障...

妄想話

アイリスの花言葉

自転車のブレーキ音が聞こえてきた。 時計を見上げると午後三時を過ぎたところだった。 揺れる影が一瞬、窓の外から作業場へ入り込んだ。 宅配ポストがコトンと音を立てる。 少し休憩を挟むことに決め、随分前から空になっていたコーヒーカップを手にすると、ゆっくりと腰を上げた。 仕事用のメガ...

妄想話

遅咲きにて狂い咲き

実はこれまで一度も働いたことがない。 このままだと近い将来にたいへん困る事態に陥るのではないか、という不安に苛まれたのが幼少の頃で、確か7歳くらいだったと思う。 ませた子であった。 ひと月も通えなかった小学校、そこから引きこもり続けた日々。 3つ歳の離れた姉がよくできたためか完全...

無国籍活動集団「alias」

「手向けの花」

「オークション史上、最高額で落札されたものを知ってる?」 と訊かれると難しいかもしれない。 ただ、それにヒントとして植物、または音響器具、スピーカーと付け加えていくとどうだろう。 音楽に詳しくない人でもオークションに関心のない人でも、それだったらと皆の口から出てくる。 一本の樹...

妄想話

AI小説家

目覚めると同時に、ゆっくりと体を翻す。 全身が汗でじっとりと湿っていて、背中には不快感がベットリとこびり付いていた。 嫌な夢を断続的にみていたのは覚えている。 最近の職場では、上司と部下の板挟みにあい苦悩していたが、こんな夢をみるのはストレスが原因だろうか。 イベント開催まで残り...