日向ぼっこする生きもの

2016-01-16

妄想話

突如、消えてしまった太陽。 
観測データを遡ってみても、太陽の活動周期に狂いが観測されたことはなかった。
しかし、現に太陽は我々の目の前から忽然と消えた。原因不明である。

これまで太陽の終焉とは、徐々に赤く膨れ上がり巨大化していき、投げ捨てる様に纏っていた外装を解き放ったのち、おとなしく「白色矮星」となり宇宙空間にむき出しで佇むと考えられていた。
地球に関しては、太陽が膨張した影響が地球の軌道にまで影響を与えなければ、遠く離れた所から冷たくなった太陽の周りをこれまでのように周回するのだと思われていた。残された地球は独りになった。

太陽が消えた日のことは一生忘れられないだろう。
極夜が地球を襲った。
暗闇の中では周りの全てが敵のように感じられ、人工的な小さな光を延々と見つめていた。
それは時間にしてまる3日だったが、これまでの人生を折り返すには十分なくらいに長く感じられた。
4日目、人類が太陽の代わりを創った。

光と熱を放つ巨大な円盤型のドローン、その名も『未確認飛行物体』である。
このドローンは現在、古機を合わせると合計5000機でこの星を周回している。
だが、その力はかつての太陽には遠く及ばない。
それから程なく、人類は冷たくなった地表を捨て、地下へと住処をかえた。

いまではモグラのようにして地表へ顔を出すのが人類の姿なのだ。
遠くの山が薄明るくなったかと思えば、ドローンが近づいてきた合図だ。
温もりが徐々に姿を現し、ほのかに暖かな光を限られた大地へ届ける。
しかし、それも1時間ほどで終わってしまい、毎日姿を見せるわけでもない。
『未確認飛行物体』と呼ばれるだけあって、周回時期は公表されていない。
そして、その開発機関も、管理している国すらわからない。



 ー ー ー ー


代替の太陽が来ないものかと、休日は厚着をして地表へ向かうのが私の習慣となっている。
ざくざくと、凍った地表を頭につけたライトで照らし歩く。
いつでも目にすることが出来るはずなのに。
見上げた先には、迫りくるような満天の空が広がる。
この美しさには飽きることは無い。
流れ星に願いをなどと言う言葉を、今はもう聞かない。
息を吐く動作よりも、降り注ぐ流星を目にするほうが多いほどだ。

遠くの山が薄っすらとその形を表す。
よかった。 今日は見られそうだ。
ゆっくりと表れ、そしてゆっくりと消えていく。
それは当たり前のように存在していた太陽と同じはずだった。
私はそれを、やはりただ眺めることだけしかできない。