其処此処(下書き)

2026-06-21

其処此処

余白と気配の物語:『其処此処』の冒頭(詩的散文)




 

其処にいたのか。 

此処にいたのか。 

 

風が通りすぎたあと、誰かの声が残っていた。 

それは名を持たない、けれど確かに私の中にいた。 


ひとつの影が、もうひとつの影を踏んで、 

ふたりの記憶が、ひとつの場所をめぐって、 

やがて、どちらのものでもない風景になる。 

  

其処と此処のあいだに、 

私は立っている。 

立っている、というより、 

まだ、ほどけていないだけかもしれない。


風が来た、また他の何処かへ。











『其処此処』という空間

 

ある日、私は「其処此処(そこここ)」と呼ばれる世界に迷い込む。そこでは人々に「名前」はなく「気配」で呼び合い、記憶は風に委ねられている。私は、自分の「此処」を探すうちに、誰かの「其処」と重なっていたことに気づく。やがて、それらが消えるとき、私は「私」という輪郭を手放す決意をする。