妄想話

「あの、閻魔さま、」

痛いのは嫌だ。誰かを悲しませたり、困らせたりするのはごめんだ。 そして、誰かを喜ばせるのも…。 でも、なんとなく今、生きているのがつらくて嫌で。 こんなことは考えなければいいのに。何かの拍子で他に意識が行っても、またこの考えの続きに戻ってきてしまう。 そういえば、昔のことを振り返...

妄想話

隠しもの

…どういうことでしょうか、娘がクリーニングに出したのだと。 この数日間、ずっと、そう思っていたのでした。 ぼんくらな私。 こんな語り口調では、何に臨んでも誠意が感じられない、覇気など皆無、アナタは誰かを一瞬たりとも愛したことがないのでしょう、冷たく冷めた人間と同じ漢字を二回繰り返...

妄想話

優しい世界への岐路

人体の秘密、不思議が昨今、急速に解明されつつある。 特にこれまで大まかにしか分類できなかった体調不良、不具合に医学的な病名が付き、病気として社会に認知される流れが強く起きている。 これは診断技術の革新。医療AIがあげた功績だと断言できる。 AIによる身体の探索は詰まるところ、我々...

かくれんぼ

読書で夜更かしなんて私には似合わない

横田創『埋葬』 三十歳前後と見られる若い女と生後一年ほどの幼児の遺体が発見された。犯人の少年に死刑判決が下されるが、まもなく夫が手記を発表する。<妻はわたしを誘ってくれた。一緒に死のうとわたしを誘ってくれた。なのにわたしは妻と一緒に死ぬことができなかった。妻と娘を埋める前に夜が明...

妄想話

ちいさな嘘

「誰にもいえない秘密を持たなくして死ぬひとなんているのかな。  自分だって。  ねぇ。  きっと、弟だってそうだったはず」  ー ー ー ー 長期休暇、まだ日が昇る前の登山道をひとり、汗をかきながらたらたらと登り歩いていた。 幼いころ、近郊の山への登山は家族にとっては恒例のイベン...

無国籍活動集団「alias」

「オーガニックバーガー」

「…trophy、Loot、…いろいろと用語が並んでるけど、えぇ…と。reward…は褒美?報酬ってことだよね?」 『…あぁ、そうなんじゃない?  でも、Blood found社が手掛けたあの献血ゲーム?アプリ? 「Blood borne」は少し前に閉鎖されたはずだろ?』 「...