白い空間『 』

白い空間『篝火』

就業中、ずっと体調が悪かった。 具体的には発熱と頭痛と吐き気が常時続いた。 しかし、それを仕事を早退する理由とするにはこの部署に措いてはパンチが利かない。 やり場のない不快感を抱えて、じっと耐えるしかない一日だった。 帰りの電車でも、直立して吊革を握るのも耐え難く、背を丸め、短く...

妄想話

三ノ国‐大樹のしずく‐

かつて、この島国は今のように統一された一つの国ではなく、三つに分かれた小国があったと伝えられている。 今でこそ不自由なく資源が隅々まで行き届いているようにも感じられるが、その昔は極端な自然環境で国が分かれていたそうだ。 ある国では、渡り鳥が糞に混ぜた種を雨のように上空から撒くとい...

妄想話

寄生木の下で

とある学会の研究発表の場で突如、それは起きた。 壇上に上がった博士の背中を、枝木のようなものが突き破り這い出てきたのだ。 当初、一部のメディアが博士の尊厳よりも事の緊急性を煽ったために、この不気味な映像が一瞬だけ大衆の目に触れた。 それからは見つかり次第に削除されるシークレット動...

白い空間『 』

白い空間『門番』

目が覚めた。 何もない白い空間を突き進んでいると、突然、一つの扉が現れた。 毎夜、この不思議な世界に連れていかれる度に思うことがある。 扉の先には、現実世界にとてもよく似ている部屋もあれば、全くこれまでの価値観が通用しない部屋など様々な世界が広がっている。 でも、その扉をくぐって...

妄想話

人工衛星「よゐ子しゃん」

駅前で信号待ちをしていたら、警察官4人に連れられてパトカーに乗り込む人の影が見えた。 「もう!なんも見えねぇ!」 影は男の声で高笑いしながら、はっきりした声でそう叫んだ。 言葉は続いていたが、閉められたドアによって塞がれた。 犯罪を抑止、監視する目的でこの国の管轄する人工衛星『よ...