無国籍活動集団「alias」

「Blood found」

隣に座る彼女が面白いゲームがあるから、と小声でささやきながら、俺の開いたノートの上に通信端末をもってきた。 なんで授業中に、このタイミングで。 相変わらずこの娘の考えが掴めないなぁ、と思いながらチラリと目をやると画面にはその掴めないはずの特徴を上手に捉えた、隣に座る彼女によく似た...

妄想話

「瞳の中のアルバム」

店を出ると、寒空には月が浮かんでいた。 ちょっとだけ、洋服のバーゲンを覗いてみるつもりが、もうこんな時間に。 彼氏を誘ったが、どうやら荷物持ちになることをやっと学習したようで連れ出せなかった。 次に誘う時には、もう少し良さげな餌を撒く必要がありそうね。   白い息を吐きながら、駅...

妄想話

忘却の背中の

 母は産まれて間もない私を抱いて、こう言ったそうだ。   「この子は世界地図と一緒に産まれてきたんねぇ」   生まれながらにして背中が痣だらけであった。 母の言葉の通り、地図でも描かれているかのようにして、生まれ持った灰色の痣が背中を巡っていた。 それについて医師は、痣は...

妄想話

右腕を差し伸べて、左手で、

まだ明け方で部屋は薄暗かった。 うつ伏せで寝ていたからだろうか。 顔の下に敷いていた左腕に、よだれが滴っていてみっともないなと感じる。 もう片方の右腕はというと、何かを掴もうとするかのように前方へ伸びている。 でもその先には見慣れない壁があるだけで何もない。 そうだ。 あたしは...

妄想話

「解体屋のたしなみ」

 これは何も、過疎化が進んだ地方の話だけではない。 住人が居なくなり、取り残された空き家がこの国では増えている。 都会の片隅でも注意して歩けば、老朽化したまま放置された民家やビルは案外すぐ見つかるものだ。 俺は、そんな主を失った建物を解体する会社で働いている。 職場環境は屋外とい...