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医者の言う通り、ものわすれが激しくなっていることをいよいよ認めざるを得ないのだろう。 悪い足を引きずりながら居間に立ち竦んで、いったい何のために動いたのかを思い出そうとするのだが答えが見当たらない。 昨晩、娘との通話で何を言われたか。それがヒントのような気がするのだが。 母さんや...
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人が「人とは異なる生物の遺伝子」を身体に取り入れて、新たに違う人種となること。それが神の意志に反する行為だと多くの者がいう。 小さな頃、人間は違う生き物の遺伝子を口にすることで生き永らえているのに、その消化された生物がはっきりと目に見える形で身体に現れないことが不思議で仕方がなか...
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山陰の湿った風が、古い作業場の格子戸を揺らしていた。 薄暗い部屋の奥、欅(けやき)の巨木と向き合う人間国宝・貞治(さだじ)の前に、それは静かに佇んでいた。 多関節のしなやかなアームと、無数の光学センサーを備えた自律彫刻システム、コードネーム「瑞雲(ずいうん)」だった。 「これが、...
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歪(ひずみ)というものがある。 どのような世界にも、ありとあらゆる、なにごとにおいてもだ。 この海底はきっと、そういった場所の一つなのだろう。 ゆっくりと、まるで花びらが海中を舞うかのように。 光を揺らしながら、一冊の本が降りてきた。 ようやく、安息の地に巡り合えたのだ。 ど...
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狭い飛空艇の操縦席。 唸るエンジン音に耳が慣れてくると震える鼓膜の更に奥、私の脳は静けさを感じ始めていた。 仲間には仕事終わりに一息つく趣味のようなものだと告げているが、本音としてはどうだろうか。 ただ、今日のように空に昇りたくなる日は素直に従う。 雲を突き抜け、高度が安定してし...
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