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人気の投稿
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気が付くと、灰色の地表の上にたたずんでいた。 後方からの風が背を撫で、前へ向き直す。 振り返ってみると、足元の先、灰色の上に白いラインが引かれている。 そのラインは左右に伸びていた。 この薄暗い世界を一周しているかのように延々と伸びていた。 先ほどからやってくるこの微かな風は、...
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夕暮れが迫れば吐く息の白さも暗闇に溶けていった。 大きな御神木を背にして、下から登ってくる小さな灯を待っていた。 大事な話と合わせて、何かでそれを形にしようと考えてみたものの、そのどちらも定まらぬままここにいる。 村人の先祖代々がどんなに遡ってもずっと昔から大きかったと言って祀ら...
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ずっと愛用してきた「歩調器」が壊れたみたい。 いつものように目覚めて直ぐ、耳元にセットして起動してみたのだけれど反応がない。 とりあえず制服に着替えてみるものの、怖くて自分の部屋から出られない。焦る。 歩調器はなかなか高額なものだというのに、国内では着用率が90%を超えているそう...
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風呂場で湯に浸かっていた。 体が温まってきたところで、少し体を起こしてマッサージをする。 再び深く沈み込む。 水面に向かって泡が「ぷくぷく」とのぼっていくのが見えた。 わたしの体にまとわりついていた泡のカプセルが立ち上っていく。 水の中から抜け出した泡は小さく「ぷちぷち...
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事件は起きる前に未然に防ぐことが肝心だ。 私は犯罪抑制のために開発されたシステムであり、社会の安全を守る役割を担っている。 人は私を「審判の扉」と呼ぶ。 搭載されたセンサーを駆使し、対象者の反応を詳細に分析する。 人が隠しきれない心象を覗くことに長けている。 私に与えられた任務は...