妄想話

やまぬ雨、内鳴る足跡

事件は起きる前に未然に防ぐことが肝心だ。 私は犯罪抑制のために開発されたシステムであり、社会の安全を守る役割を担っている。 人は私を「審判の扉」と呼ぶ。 搭載されたセンサーを駆使し、対象者の反応を詳細に分析する。 人が隠しきれない心象を覗くことに長けている。 私に与えられた任務は...

妄想話

「World Unite Games Olympia」

「World Unite Games Olympia」宣言 「私たちは、世界中の人々がつながり合い、個人の運動参加の自由を尊重することを誓います。誰もが自らの選択で競技に参加できるこの祭典を通じて、全ての人々に平等な機会を提供し、スポーツを通じた国際的な友...

妄想話

信用通貨「オラクル・ベリー」

かつて、世界は大きな変革を迎えた。人々の生きざまがスコアとして数値化され、そのスコアが信用通貨「ベリー」として社会を動かす時代が到来した。 この信用通貨は、元はベーシックインカムの一環として導入されたものであった。 しかし、その対象者である、監視生活を送ることを余儀なくされる者た...

妄想話

もぐらたたき

幼い頃の私は誰にも心を開かず、言葉を発しなかった。両親は私の将来を心配し、あらゆる病院を訪ね歩いたが、どこへ行っても私に変化の兆しは見られなかった。周りの子が学校に通い始めても私の心は閉ざされたままだったが、その頃には自らの意思で外界と接点を持つことを望んでいなかった。 困り果て...

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無職の証明

ある日、タナカは市役所からの通知に従い、指示された市役所の離れに向かって歩いていた。無職であることを証明するためにだ。しかし、担当の職員は「書類で無職を証明しないでください」と言い張る。タナカは困り果てたが、どうにかして無職であることを伝えようと決心した。 タナカは大きくあくびを...

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ブレインエクスチェンジャー

酒類も禁止薬物扱いになった昨今、相変わらず精神疾患が現代病としてはびこっている。 脳波をコントロールして鬱や不眠症状を改善する医療アプリとして認められているものがあったが、巷ではそれを改造した「ブレインエクスチェンジャー」なるアプリの使用が事実上黙認されている。 瞬時に眠りに入る...