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一台の小型ロボットが部屋の片隅で羽を休めている。 時おり頭をころころと傾けては、今日もプログラム通りに『トンボ』を演じている。 ー ー ー ー 昔、ボクが幼い頃のことだ。 おもちゃメーカーが子ども用に手掛けた昆虫ロボットが流行った時期があった。 「カブトムシ、クワガタ、トン...
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歪(ひずみ)というものがある。 どのような世界にも、ありとあらゆる、なにごとにおいてもだ。 この海底はきっと、そういった場所の一つなのだろう。 ゆっくりと、まるで花びらが海中を舞うかのように。 光を揺らしながら、一冊の本が降りてきた。 ようやく、安息の地に巡り合えたのだ。 ど...
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子どもの手をとり、行き交う車と距離を取る。 横断歩道の前で、信号が切り替わるのを待つ。 「…おとうちゃん」 私の娘は最近になって車を怖がるようになってきた。 不安そうな顔で見上げてくるので、つないでいる手を大きく上下に揺らしてみると少し表情が和らいだ。 目の前を忙しく横切る視...
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ずっと愛用してきた「歩調器」が壊れたみたい。 いつものように目覚めて直ぐ、耳元にセットして起動してみたのだけれど反応がない。 とりあえず制服に着替えてみるものの、怖くて自分の部屋から出られない。焦る。 歩調器はなかなか高額なものだというのに、国内では着用率が90%を超えているそう...
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雨上がりの駅のホームで、男が泣いていた。 誰か近しい人が亡くなったのかもしれないし、仕事がうまくいかなかったのかもしれない。 理由はわからない。 ただ、涙の粒がコンクリートに吸い込まれていく様子に見とれていた。 その瞬間、思い浮かんだのだった。 「この場面、もし月が昇っていたら、...