白い空間『 』

白い空間『灰色の均霑』

目の前が真っ白に染まった。 いつものことだ。 現実世界で眠りに入ると、私は白い空間に誘われる。 その原因はわからないが、そんな定めの中に私はいる。 いつものように白い空間を彷徨い歩いていると無数の扉が現れはじめた。 どれか一つの扉を選択し、どんな世界が待ち受けていようと踏み込まな...

妄想話

悪魔の手

  目が覚めると、左手が自分のものとは違っていた。 手首から指先にかけてが歪であり、人間のそれとは明らかに形が違う。 血色の悪い、鱗うろこのようなものがびっしりと生え、それはごつごつとした灰色の手だった。 そして、確かに左手の人差し指、中指、薬指の爪に「壱、弐、参」と順番に数字が...

妄想話

観測員の死亡届

身を打つ強い衝撃が。 それと共に唐突な眠気に襲われ、抗うことなく瞼を閉じた。 そして、朝が来たから、という当然の流れのようにして私は目覚め体を起こした。 という、そんな感じだったが、瞬時に違和感を感じた。 どうしてこんな硬いアスファルトの上に寝そべっているのかと疑問に思うのと同時...

妄想話

黒の時間-囚われの売買人-

  預金通帳を開いたまま、ATMのすぐ横で立ちつくす。 貧弱な残高を見つめていた。 当然のことながら一円も入金はされていない。 この惰性な生活も2年目に突入した。 今となれば、感情に任せて唐突に仕事を辞めたことを後悔している。 未練がましく、振り込まれることのない未払い給与に期待...