妄想話

海をたゆたふ

人が「人とは異なる生物の遺伝子」を身体に取り入れて、新たに違う人種となること。それが神の意志に反する行為だと多くの者がいう。 小さな頃、人間は違う生き物の遺伝子を口にすることで生き永らえているのに、その消化された生物がはっきりと目に見える形で身体に現れないことが不思議で仕方がなか...

妄想話

「この子」のいる書店

それはある日、この小さな書店の中へ飛び込んできた。  少し遅いお昼ご飯を食べ終わり、店番をしていた妻と交代したところであった。 いつも通り、時刻は二時を過ぎた頃であっただろう。 その時は、確かに店の中に客は一人もいなかったはずだ。  「おい、居るんやろ?」  店の入り口の方から、...

妄想話

俺の人生を超えて逝け

  今や先人の知恵や技術などは、お金さえ出せば簡単に手に入る時代になった。 お気に入りの音楽を聴くように、気になった本を書架から一冊抜き取るように。 国民は祖先が代々受け継いできた能力を引き継ぐ権利があり、この先の国の未来へと紡いでいく義務があるのだ。 もはや「伝統」という言葉は...